認知症コラム

ビル・パーキンス著「DIE WITH ZERO」を読んで

最近、旧友から画期的な一冊を紹介されました。「ただ生きるだけではなく、十分に生きる。経済的に豊かになるだけではなく、人生を豊かにするための方法を考える」がテーマで、死ぬまでに資産を使い切る上での心理的抵抗を11つ検証し、考察していきます。これからもきっと何度も読み返すことになるでしょう。
 この本の根底には「人生で一番大切な仕事は思い出づくり」という思想が流れています。自分は仕事柄もあってなのか、人生最後の日から逆算して、今日までに何を済ませておくべきかという考えのもと生きてきました。「何を済ませておくべきか」は「思い出づくり」とは必ずしも直結せず、正直、思い出とはつながらないことに結構な労力を費やしてきた感じもします。これからは「思い出づくり」にもう少し積極的に焦点を当てたライフスタイルを身に付けたいものです。
 ただ一方で、認知症になるとその思い出も、時間経過とともに失われていきます。人生最後の日まで覚えていたかった思い出も、もしかするとなくなっているかもしれません。それはとてもつらいことではありますが、自分にそれが起こったとしても、それもまた人生と静かに受け入れるしかないと腹をくくっています。自助努力でどうにもならないことをクヨクヨ悩んでも仕方がありません。たとえ人生最後の日に、大切な思い出がなくなっていたとしても、人生のある地点まではその思い出とともに生きてこられたわけです。「人生で一番大切な仕事は思い出づくり」という思想に変わりはないと思います。