認知症コラム

高齢ドライバー②

 高齢化率の上昇に伴い、高齢ドライバー数は近年著しく増加しています。高齢ドライバーによる事故の主な原因として、身体機能の低下(視力・聴力・反射神経・体力・筋力などの低下は、運転操作の正確性や状況判断に影響を与える)、認知機能の低下(注意力・集中力・判断力・記憶力などの低下は、危険予測や状況判断の遅れに影響を与える)、運転能力に対する過信(漫然運転・だろう運転・居眠り運転・脇見運転)などが考えられます。運転免許試験場や自動車教習所で受けた認知機能検査で、認知症の疑いありと判断された運転免許所有者には医師の診断が義務付けられ、認知症と診断されれば免許証の取り消しまたは停止となります。この医師の診断は、道路交通法に基づいた強制力のあるものです。
 認知症の人が運転中に交通事故を起こした場合、刑事責任と民事責任の両面で責任が問われる可能性があります。刑事責任では、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪に問われる可能性があります。民事責任では、認知症の人が責任能力を欠くと判断された場合、監督義務者(通常は家族)が損害賠償責任を負う可能性があります。ただし、認知症の程度や事故の状況によっては、刑事責任が問われない場合もあります。
 公共交通網が発達していない地域において、運転免許証の取り消し・停止は一大事です。高齢ドライバーの取締強化や自動運転技術の革新ばかりでなく、地域として利便性・安全性を両立させる実効性のある政策が求められます。オーストラリアのニューサウスウェールズ州では85歳以上の免許更新で実車試験を受験しない場合に走行地域を限定した免許が交付されます。サポートカー限定免許のみならず、地域・速度・時間帯の限定免許は日本でも検討されて欲しいです。